Tuesday, March 25, 2014

奇跡の薬を探して


『でも大丈夫。この娘が大きく成るのさえ見届ける事が出来れば』

静寂さと共に満面の笑顔でそう俺に語った。

2006年1月。

14年振りに最初に日本へアメリカから戻った時だった。

『アメリカか〜 飛行機なんて私は一生乗れないかも』

『パスポートも持ってないしさ』

『でもお兄ちゃんは行った事あるんだよニューヨークに』

『住んでる街、どんな所か見てみたいな〜』

笑いながら純粋そのもので語る従姉が運転席に座っていた。

静岡県三島市の新幹線の駅前。

小雨が急に降って来てワイパーが右へ左へギシギシと揺れる。

『絶対に大丈夫だから。必ず治る薬が見つかるはず』

『また必ず逢いに来る』

そう言って俺達は大きなハグをした。

『行かなきゃ...もう時間だ...』

胸が張り裂けるような悲しみと切なさを今でも覚えている。

忘れるもんかこの俺が。

筋ジストロフィー。

筋肉が低下して破壊されていってしまう難病。

残念ながら今の世界のどんな医学でも治す事が出来ない…

意味が解らない。

納得が出来ない。

もっとこのアメリカで心のある医者と科学者が必要なんだ。

もういいだろ、マンモスをクローンして造り上げる科学者達も。

もういいだろ、金の為に意味のないドラッグを造って人を殺すドクター達も。

もういいだろ、人を殺す為の化学兵器を造り上げる科学者達も。

そんな事より早く早く、いち早くこの難病を治す奇跡の薬を造ってくれ。

ありったけの命を叩いて俺はそう叫びたい。

このアメリカ大陸の空の下で。


–2006年1月、従姉のSadakoとその娘のMikiと静岡県三島市にて–





No comments: